『言葉の力』
「言葉の力」 池田晶子
言葉を信じていない人は、自分のことも信じていない。
しかし、自分を信じていない人生を生きるのは、とても苦しくて大変だ。
言葉ではああいったけれども、本当はそうは思っていない。
そんなふうにしか生きられない人生は不幸だ。
言葉と自分が一致していない人生は不幸だ。
だから、本当の自分はどこにいるのかを、
人はあちこちを探し求めることになる。
しかし、本当の自分とは、本当の言葉を語る自分でしかない。
本当の言葉においてこそ、人は自分と一致する。
言葉は道具なんかではない。
言葉は、自分そのものなのだ。
だからこそ、言葉は大事にしなければならないのだ。
言葉を大事にするということが、自分を大事にするということなのだ。
自分の語る一言一句が、
自分の人格を、自分の人生を、確実に創っていくのだと、
自覚しながら語ることだ。
そのようにして、生きることだ。
言葉には、万物を創造する力がある。
言葉は魔法の杖なのだ。
人は、魔法の杖を使って、どんな人生を創ることもできる。
それは、その杖をもつ人の、この自分自身の、心の構え一つなのだ。