『効率化という幻想』

 

 

新幹線や携帯電話が

人間を自由にしたかというと、

難しいところですよね。

「効率化すると自分の時間が増えますよ」

というような本が最近もてはやされますが、

増えた時間をどうするんでしょう?

そもそもが、

効率を良くするためのエネルギーを使っていて、

時間が増えているかどうかも怪しい気がします。

エネルギーの反作用として、

必ず弛緩時間が出てくるので、

少し時間軸を長くとれば

動的平衡なのでトントンになってしまいます。

上がったところだけを見て、

私は効率がいいですよ

と言っているだけのような。

福岡伸一

 

 

福岡伸一氏の「せいめいのはなし」(新潮文庫)を読んでいて、

上記のような記載がありました。

この記載を読んで、

そもそも、

「何を目的として効率化をするのか?」

「時間を増やして一体何を実現するのか?」

という疑問が浮かんできました。

 

確かに

「効率化すること」

あるいは

「時間を増やすこと」

ということは誰もが否定しない、

いわゆる「価値あること」であることは間違いありませんが、

そのこと自体の価値のみが強調され、

それで本当に何かが変わるのかということが

忘れられているように感じました。

 

全体で見たときには、

実は何も変わっていない、

むしろ、

非効率になり、

時間も減っていることがあるのではないか

ということを時には冷静になって考える必要があるのではないか

と考えさせられた次第です。